精油抽出事業を始めようとした時、私が一番考慮したのは蒸留担当者を誰にするかということでした。
新事業への挑戦には、何より社員の同意が欠かせません。社員一同はもちろん、特に担当者には心からの賛同をしてもらう必要があります。
私には、担当者になって欲しいと心に決めた人物がいました。
入社15年目の製造部長。
手先が器用で、機械のメンテナンスや、治具作りなどを器用にこなし、もの作りが大好き。新しい事に取り組む意欲もあり、彼なら「精油抽出」という新しい事業に、本気で一緒に取り組んでくれるだろうと思ったからでした。
事業計画書を作成する段階で、なぜ精油事業を始めるのか、新事業は会社にとってどういうポジションか、そして、担当者として新事業を一緒に育てて欲しいと相談しました。
自分にできるだろうかという不安をこぼしながらでしたが、部長は快諾をしてくれました。
私は胸を撫で下ろし、事業開始に向けて精油抽出機の選定について検討に入ります。
まずは、私達はどのような精油を作りたいのか、作りたい精油にはどのような抽出機械が必要なのかを話し合い、県内外の精油抽出メーカーの視察を行いました。
【MICIL】でどんな商品作りをするか
・私達が暮らす地元高知県の素材を利用すること
・原材料はできるだけアップサイクルであること
・自分たちが使用して心地良いと感じるもの(自信を持って薦めたいもの)
・素材選びから生産管理まで責任を持ち、誠心誠意作ること
そして、抽出機械をどうするかを検討しました。
精油抽出には、抽出方法がいくつかありますが、植物の種類や使用目的などによって選ばれます。
■水蒸気蒸留法
水蒸気蒸留法は最も多く利用される精油の抽出方法です。材料となる植物を装置に入れ、水蒸気または水で加熱します。植物の精油は蒸発し、その後この蒸気を冷却させます。冷却後オイルの混合物は液体に戻り、精油と蒸留水に分離します。水よりも軽い精油は水面に浮くので、精油だけを集めます。
■圧搾法
圧搾法は、果皮などを機械で絞って香りの成分を搾り出す方法です。この方法では熱を使わないため自然な香りが得られます。ただし、果皮に付いた汚れや不純物も一緒に出てしまうことがあり、酸化しやすく劣化しやすいことに注意が必要です。
■溶剤抽出法
石油エーテル、ヘキサン、ベンゼンなどの揮発性有機溶剤を用いた方法で、水蒸気蒸留で破壊されやすい、または他の方法では抽出できないデリケートな花や植物から精油を抽出するために使われます。この方法では、化学溶剤を使用して植物の芳香成分を吸い出します。溶剤と精油の混合物はその後、蒸発によって溶剤を除去し、精油だけを残します。
■CO2蒸留法
CO2蒸留法は、高圧下で二酸化炭素(CO2)を使用した抽出方です。高圧となると二酸化炭素は「超臨界状態」と呼ばれる状態になり、液体と気体の両方の性質を持ちます。抽出プロセスはシンプルで、原料を抽出する円筒型の容器に入れて、CO2の温度・圧力を変化させ。香気成分をCO2に溶かします。この方法は非常に高い純度の精油を得ることができ、また熱を使用しないため熱に敏感な成分も抽出することができますが、機械が高額で精油コストが高くなります。
私達は、シンプルな構造で使い勝手もよい「水蒸気蒸留法」の抽出機械を選ぶことにしました。
そして、事業計画書を作成し事業再構築補助金に応募をしました。
その③に続く