初夏の気配が訪れた、と思ったのは束の間、今日は肌寒く、先ほどからは
雨が降り出した高知です。
当社は日本最後の、木毛(もくめん)専業業者です。
日本では、当社以外に、2社ほど兼業で木毛を作っている会社がありますが、
当社の国内の木毛のシェアは、80%程度と想定されます。
すなわち、市場で目にする木毛は、高い確率で当社の商品であり、また、それ以
前に、めったに目にする機会のない、希少な素材という立ち位置になってしまっ
ております。
そのようなことで、高知県内外で、初めての方にお会いし、自己紹介で、
「木毛の製造販売をしています」とご挨拶をすると、ほぼ100%の確立で
「木毛て何ですか?」と聞かれます。
6年ほど前から、都心部の展示会に出展し、自ら営業をし始めた時、世間の方が
あまりにも木毛を知らない事に驚愕しましたが、今では、ほらそうだよね、
そうなっちゃいますよね、とこなれた対応で、名刺裏に印刷している木毛をご覧
頂きながら、ご説明をしています。
若い方(40代以下)は、ほぼご存知ありません。
そんな時、こんなに知られていない木毛て、まだまだ成長の可能性があるんじゃ
ない?と自分を奮い立たせるわけですが、年配の方は「あ~、そういえば、果物
の下に敷いているの見た事あります」と遠くを見つめる眼差しで、反応して下さ
います。
ただ、それだけでは終わりません。
「木毛て書いて、もくめんて読むんですね…」
腑に落ちない相手のお顔。
そうなんです。
毛を「めん」と読ませているのはなぜ?となります。
実は、木毛は「モクモウ」が正式な呼び名です。
工業品の製品分類でも、「モクモウ」です。
なぜ、読み方が違うのか?
私も嫁いで、家業を手伝い出した時、疑問に思い父に聞いてみました。
Answer
昭和40年代に木毛業者は全国に120社ほどあり、競争が盛んだった。
当時は、木毛業界の組合があり、東日本と西日本に分かれて活動していた
ため、西日本の業者が差別化を図るために、木毛と書いて「もくめん」と
名付け、販売した。
とのこと。
つまりは、当て字で、読み方を変えた、という事です。
ここまで読んで下さり、計算された販売戦略か、もしくは業界特有の深い意味が
あるのか、など期待されていた方、しょぼい感じの理由でごめんなさい。
私も、それを聞いた時は正直「呼び名をわざわざ変えるほど、関東と関西で品
質に違いがあったのか?お客様が混乱するだけじゃないか?」と思いましたが
それぞれに、木毛を販売する事に必死だった先達は、苦肉の策で、呼び名変更
という戦略を取ったのでした。
地域で呼び名を変えた名残なのか、のどかさなのか、関東では「もくもう」以外
に「もくげ」と呼ぶ業者もあることを知り驚きました。
なんて、自由!
製造メーカーも激減し、木毛自体の知名度が低い上に、呼び名まで異なるという
非常に分かりにくい木毛(もくめん)
でも、私は「もくめん」という呼び方が気に入っています。
なぜなら、「ラーメン」や「ソーメン」など、最後に「ン」の付く名前は長く
愛されているから。
大好きな「ダウンタウン」も「ウッチャン・ナンチャン」もン終わりだし。
もくめんも、きっと長く愛され続け、次世代に受け継がれていける!と強く
信じている私です。